かりそめの関係でしたが、独占欲強めな彼の愛妻に指名されました


「引っ越して、住所変更を総務に出せば同棲してるって気付かれるだろうから……?」

総務部に届を出せば、そこで同棲には気付かれるだろう。
そして、同棲の事実はあっという間に全フロアに広がるのが予想できる。

そうなった場合、直接聞きにくる人もいるだろうけれど、その対応が桐島さんと私でわかれたらまずいからその時のことを考えて……。

『どうせすぐにまた噂になるよ』

ベッドでの桐島さんの声が頭に浮かんでクラクラした。

土曜日、公園を歩いているときにやたらと今住んでいるマンションの部屋について聞いてきたのも、その時から既に同棲計画が持ち上がっていたからだったのか……と全部の点が線になり、うなだれそうになった。

気付いたら外堀全部が埋められている。

『だから、ごめんね。こんな重たい想いを聞かされてひかれたかもしれないけど、手に入れた以上、たぶんもう離してあげられない』

桐島さんの言っていた言葉にどれだけ本気の想いが込められていたのかを知り、少ししたあと笑みがこぼれた。

こんな素敵な人にベタベタに愛されて、きっと私は幸せなのだろう。



新しい部屋に運ばれた荷物を解ききったところで、寝室の片付けをしていた桐島さんが覗きにきた。

2LDKという間取りの部屋の使い方は、話し合った結果、ひとつが寝室、もうひとつが書斎兼、物置で決まった。

陸とのルームシェアとは違うし、お互いに部屋を持っていてもどうせリビングにいる時間がほとんどになりそうだというところで意見が一致した。

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