かりそめの関係でしたが、独占欲強めな彼の愛妻に指名されました
「そういえば、桐島さん、初めてうちに陸を訪ねてきたとき、私を見て驚いた顔してましたよね。兄妹だとは知っていても、ルームシェアしてることまでは知らなかったんですか?」
私のことはうちに来る前から知っていたって話だった。
陸はおしゃべりだし、私と一緒に住んでいることも話しそうなものなのにな、と単純に疑問を抱いたから聞いただけだったけれど……おかしな間があり、隣を見上げる。
マグカップに口をつけていた桐島さんは、私の視線に気付くとにこりと目を細めた。
「そうだね」
なんとなく、だった。
本当になんとなく今の言葉が嘘に思え……桐島さんを見つめたまま口を開く。
「あの日、陸が約束忘れてたんですよね? 一ヵ月も先の約束を、陸が忘れる可能性の高さ……桐島さんも知っていたけど、久しぶりだったからうっかり忘れてただけなんですよね?」
聞きながらも、私はほとんどその答えをわかっていた気がした。
『言い訳になるけど、桐島と約束したのってだいぶ前だったんだよな。あいつの予定が空いてないとかで。一ヵ月くらい先の日を言われたから、〝俺、絶対忘れるから数日前に一応連絡入れてくれると助かる〟って話してて、桐島も了承してたんだけど、あいつは約束自体は覚えてても連絡する方を忘れたみたいでさ』
桐島さんは、そんなうっかりはしない人だ。
それに仕事柄、クライアントと会う前にはきちんと連絡を入れる癖だってついているハズ。
もしかしてあの日、陸が部屋にいないのを前提で訪ねてきた……?
まさか、と思うながらもどうしてもそれが正解に思えた。
先日、桐島さんが酒井部長に言っていた言葉が頭をよぎる。