かりそめの関係でしたが、独占欲強めな彼の愛妻に指名されました


「澪に惹かれる予感はあったから、運に背中を押されてるみたいで気持ちに勢いがついた。なんて言っても、実際そこから始まった恋は思い通りにはいかなかったけど」

苦労したと言わんばかりの苦笑を向けられても困る。
私は私で精いっぱい初恋を受け止めようとしていただけだし、桐島さんを振り回した覚えもない。

それに。

「十分、計画通りになってると思います。あの日、陸がいなかったことも……それに、結果的に今、私はここにいますし」

私の言い分に、桐島さんはおかしそうに「それはそうかもね」と笑う。

「でも、あまりおもしろくないです。私は必死に考えたりうろたえたりしていたのに、きっかけから全部桐島さんの計画通りだったなんて」

まるで手のひらの上で踊らされていたように思え口を尖らせた私に、桐島さんが目を細める。

「全部なんてことはないよ。言っただろ。うまくいったのは初日だけで、そこからは予想外のことばかりだったって。仕事とは違って、相手は好きな子だしね。私情のせいで冷静な判断もできなくなるし、俺だってじゅうぶん振り回されたよ。それに、たぶん、この先も振り回され続ける」

「……その割に楽しそうですね」

私は桐島さんの気持ちがわからなくて振り回されていたとき、正直動揺してばかりで楽しくはなかった。

それなのに桐島さんが嬉しそうに見えたから不思議に思い聞くと、笑顔を返される。

「ひとつくらい思い通りにいかないものがあるのもいいかと思って。澪のことを考えている時間は楽しいしね。今までの生活が充実していなかったわけではないけど、澪と出逢ってから視界がクリアになったとでも言えばいいのかな。新鮮で楽しい」

目を合わせ「澪は?」と聞かれたので、少し考えたあとで答える。


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