かりそめの関係でしたが、独占欲強めな彼の愛妻に指名されました


「それより、桐島さんとのこと陸に聞いたの?」
「そう。昨日デートしてたから、そのときに。澪との約束も友達との約束も忘れて別の飲み会に参加したって落ち込んでたから、なぐさめてたんだけどね。そしたらポロッと桐島さんの名前が出てきて、まさかなぁって思いながらも聞いてみたらそのまさかでびっくりした」

紗江子とは、研修で一緒に行動することが多かったのがきっかけで仲良くなった。
明るくて天真爛漫な紗江子は、どこか陸を連想させるせいか自然と距離は縮まって、今はただの同期というよりは普通の友達に近い。

とてもいい子で、行内でこんな友達ができるなんて思ってもみなかったからそれはとても嬉しいのだけれど……。
ひとつだけ、後悔していることがある。

部屋に遊びにこさせたことだ。

そのときに陸と鉢合わせたせいで、一瞬にして打ち解けたふたりがとんとん拍子で付き合うようになったのが半年前。

紗江子に彼氏ができたのは喜ばしいことだけれど、その相手が陸ってなると……なんだかちょっと素直には喜べない複雑な部分がある。


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