かりそめの関係でしたが、独占欲強めな彼の愛妻に指名されました
「で? で? 桐島さんとなにかあったりした?」
ニヤニヤしながら肩を寄せてきた紗江子に、ため息を落とす。
「なにかあるわけないでしょ。他の人に目の敵にされたくないもん」
「えー、でも、澪と桐島さんだったら並んでも絵になるし、そこに文句言えるレベルの美人なんてそんなにいなくない? まぁ、よほど身の程知らずの勘違い女だったら図々しく口挟んできたりもするのかもしれないけど」
紗江子は可愛い顔立ちをしている。童顔だから、まだまだセーラー服も似合いそうだし、美少女って言葉がぴったりだ。
ロングのゆるふわの髪型も紗江子の雰囲気によく似合っている……のに。
こうして、結構辛辣な発言を普通にするから、そのたびに驚いてしまう。しかも場所を選ばないところがあるから危ない。
そういうところまで陸にそっくりだ。
こんなこと、本当に誰かに聞かれたらまずい。
そう思い、着替え終えた紗江子の背中をポンと叩き更衣室を出た。
「なんかもう、結婚しようかと思うの。ほら、私も澪も今年で二十五だし、結婚適齢期にあたるでしょ? 女の価値って二十八がテッペンだとか聞くし」
十三時を過ぎた休憩スペースは、四割ほどの席が空いていた。
うちの会社では、十一時から十四時の間、各自都合のいい時に一時間お昼休みをとるのがルールになっている。