かりそめの関係でしたが、独占欲強めな彼の愛妻に指名されました
恋愛経験がほぼゼロの私が判断するのも失礼だけど、きっと桐島さんは完璧だ。
レーダーチャートで表したら、それはそれは綺麗な五角形ができあがるんだろうなと容易に想像がつく。
女性行員が熱を上げるのも無理はないと思った。
「あれ、お昼それだけですか?」
桐島さんがテーブルに置いたのは、コーヒーショップのコーヒーだけ。それ以外にはなにも持っていない。
お昼休憩のはずなのに……と不思議に思い聞くと、桐島さんは「外で食べてきたから」と答えた。
「本当はオフィスで飲もうかと思って買ったんだけど、相沢さんがいるのが見えたからそれで」
「あ、そうですよね。桐島さんがこんなところでランチなんかとってたら、隣の席を狙った女性行員が一戦繰り広げて大変なことになりそうですし」
「まさか」
真面目に言ったのだけれど、桐島さんは私が冗談でも言ったみたいに笑う。
『まさか』とは言っているものの、桐島さん自身、自らの人気に気づいていないわけもないから、適当に流したのだろう。
「お昼、どこに行ってたんですか?」
「蕎麦屋。老舗の方の。同僚に蕎麦好きがいて、月に何度も付き合わされるんだよ。今月も四回目」
会社からランチに行ける範囲にあるお蕎麦屋さんは二件。老舗の方のお店は、店内の雰囲気も料理の器も上品で私も気に入ってたまに利用している。
もっとも値段が結構高めだから、そんなに頻繁にはいけないけれど。