かりそめの関係でしたが、独占欲強めな彼の愛妻に指名されました
「あそこの海鮮かき揚げおいしいですよね。しっかり海老とかイカが入ってて得した気分になります」
「ああ、俺もいつも頼むよ。あまり腹いっぱいまで食べると午後の仕事がはかどらないから抑えようと思うのに、あの店行くと、つい」
そう言い笑う桐島さんに「わかります」と笑顔を返す。
桐島さんはエリート中のエリートだから、普段からとてもいいお店を使っていそうだし、食べるものも高級そうだと思っていた。
けれど、私が作ったビーフシチューをおいしいと食べてくれたり、お蕎麦屋さんの海鮮かき揚げが好きだったり、私との間にそこまでの大きな溝があるわけではないようで意外に思う。
……まぁ、でも、あのお蕎麦屋さんに月に四回も行ける時点で立派なエリートだけど。
「今度、相沢さんの都合がいい日にでも一緒に行こうか。先週のお礼にご馳走するよ。今月中、時間ある?」
思わぬ誘いを受け、慌てて首を振った。
「いえ、お礼なんてしてもらうような料理じゃなかったですし。大丈夫です」
「でも、おいしかったし、なにかお返しがしたいから」
「本当に大丈夫です。食器も洗ってもらってコーヒーも入れてもらいましたから。それに、私とお蕎麦屋さんに行ったら、桐島さん、今月五回目になりますよ」
ふふっと思わず笑いながら言うと、それを見た桐島さんがふっと表情をほころばす。
爽やかな笑顔を浮かべる様子に、これはプライベートモードの方の笑顔かな?と思った。