かりそめの関係でしたが、独占欲強めな彼の愛妻に指名されました
たしかに、陸と私は似ていない。昔はそっくりなんて言われた外見も、成長するなかで変わったし、性格に至っても同様だ。
鉄砲玉みたいな性格の陸と、冷め気味な私。
最近、父親は『兄妹なら、どうしてもっとうまいこと足して二で割れなかったのか……』と口癖のように言うけれど、私はそのため息の原因は二十六になっても未だに騒がしい陸だと思っている。
まぁ……二十四になったのに、恋人のひとりも親に紹介したことのない私も、原因の一端くらいにはなっているかもしれないけれど。
「そうですね。兄と私で似てるところって言ったら、髪質だとか、冷え症なところくらいですし」
「ああ、たしかに。ふわふわした猫っ毛が同じだ」
玄関の段差は十五センチほど。その段差があって、丁度身長が同じくらいになるって事は、この人は一七五から一八〇センチ近くあるって事だ。
……それにしても。噂通り綺麗な顔をしている。
仕事帰りのワイシャツ姿は特にオシャレをしているわけでもないのに、雑誌の表紙から飛び出してきたみたいだなと思った。
モデル顔負けとでも言うのだろうか。
「急にごめんね。まさか、陸が相沢さんと同居してるなんて知らなかったから。陸と約束してたんだけど……その様子じゃいなそうだね。しかも俺が来るってことも聞いてなかった感じか」
苦笑いを浮かべる男性に、まだどこか混乱の波から抜け出せないまま「よく、私のことなんて知ってましたね」と、なんとか返す。
銀行内で特別目立つ存在でもない、その上、仕事で関わることがほぼない私の名前を覚えているなんて、よほど記憶力がいいのか。