かりそめの関係でしたが、独占欲強めな彼の愛妻に指名されました
あまり詳しく説明したくなかったからだったのだけれど、「どんな別れ方だったのか聞いてもいい?」と言われてしまい……少し迷ったあとで箸を置く。
黒田とのことは陸も知っている。
私が誤魔化したところで、陸に聞かれれば同じことだと諦めた。
桐島さんだってそこまで興味があるわけでもないだろうし、執拗に隠すような内容でもない。
周りの席の話し声が、内容までは聞き取れないボリュームで聞こえてくる中、ゆっくりと口を開いた。
「無理やり押し倒されたときに、私があまりに暴れたからかひっぱたかれたんです」
途端、桐島さんが顔色を変えたのがわかり、慌てて笑顔を作る。
「あ、大丈夫です。黒田も咄嗟に手が出たっていうか、弾みでって感じだったので、そこまで強くされたわけでもなくて。それに、一瞬呆然としてからすぐに殴り返しましたし。たぶん、黒田にされた倍以上の力で」
黒田自身、自分が手をあげたことが信じられないようだった。
ハッとした様子で『あ、ごめん……』と私から手を離した黒田を、渾身の力でひっぱたき返し……その日に別れを告げた。
「はたかれた時は頭にきて殴り返しちゃったけど……でも、私もよくなかったんだろうなって思うので、まぁ、どっちもどっちというか」
苦笑いをこぼす。そんな私を見て、桐島さんが神妙な面持ちで「俺には相沢さんが悪い点が見つからないけど」と言うから、説明する。