かりそめの関係でしたが、独占欲強めな彼の愛妻に指名されました
「だって、相沢さんは女同士だからこうして気軽に話しかけられるけど、桐島さんは違うじゃない。仕事が忙しいのも知ってるし、休憩スペースとかをあまり使わないから、そもそものチャンスがないのよね」
「はぁ……」
「だから、本当は声をかけて距離を縮めたいのに、ずっと見てることしかできないでいたの。桐島さんの同期に声かけてみても取り持ってもらえなくて、もう無理かなーって諦めかけてたところに現れたのが相沢さんってわけ」
ニコリと微笑まれ、眉を寄せた。
「たしかに桐島さんとは知り合いですけど、正直、そこまで仲がいいわけじゃ……」
「誤魔化しても無駄よ。一緒にランチとってたって噂が広がってるんだから」
「え、もう?」
桐島さんと休憩スペースで一緒になったのは三日前の月曜日の話だ。
桐島さんはもともと休憩スペースにこないから、少しくらいは噂になるかなと覚悟はしていたけれど、まさか三日で駆け巡るとは思ってもいなかった。
桐島さんのネームバリューにさすがだな……と感心する。
「でも、仲がいいわけじゃないっていうのは本当です。お昼休みに一緒になったのだって一度だけですし、桐島さんの携帯番号とかメッセージのIDだって知りませんし。紹介してほしいって言われても、私自身、桐島さんと次いつ話すかわからない感じなので」