かりそめの関係でしたが、独占欲強めな彼の愛妻に指名されました
本当は、昨日の夜も桐島さんと一緒だったけれど、そこは言わないでおく。
これ以上噂が大きくなって、緒方さんみたいに桐島さん狙いの女性に話しかけられても面倒だ。
私の答えが期待とは違っていたからか、緒方さんは眉を寄せ「えー」と口をへの字にゆがめた。
「番号もなにも知らないの? じゃあ、休憩スペースではたまたま一緒になっただけってこと?」
「だからそう言ってるじゃないですか」
「でも、特別な関係だって噂だったから」
「特別?」と聞き返すと、緒方さんが髪先をいじりながら答える。
「誰かが桐島さんに相沢さんとのこと聞いたらしいの。そしたら桐島さん『相沢さんは特別』って答えたって」
まぁ、特別と言えば特別かもしれない。でもそれは、友達である陸の妹だからという理由であって、それ以外の意味はない。
桐島さんも面倒な答え方してくれたな……とこっそりため息を落としていると緒方さんが言う。
「じゃあ、今度桐島さんと話す機会があったら私のこと言っておいてくれない? 番号渡しておくから、もし休憩スペースで一緒になったりしたら呼んで。別に相沢さんから頑張って桐島さんに会おうとしなくていいし、もしも偶然会ったらでいいから。それくらいならいいでしょ?」