かりそめの関係でしたが、独占欲強めな彼の愛妻に指名されました
「でも、噂を聞いた時には驚いたわー。桐島さん、今まで女性関係で一度も噂になったことがないのに、まさか相沢さんと……なんて。同期の間では、なんで相沢さんなんだろうって話が出てたのよ。相沢さんもすごく綺麗だけど、みんなは桐島さんには私の方が似合ってるとか言ってくれてね」
「はぁ」
「ほら、相沢さんって美人だけど冷たそうじゃない。無愛想ってほどでもないけど……自分から近寄らないでオーラ出してる感じとでも言うのかな。とっつきにくいとか言われない? その点、私は融資部で営業もやってたりするから愛想もいいし」
確かに、緒方さんは愛想がいい。
初会話の私にさえさっきから笑顔だし、それに比べて私はニコリともしていないから、無愛想だと言われても仕方ないし、近寄らないでオーラもその通りだ。
ひがみだとかそういう嫌な感情からへりくだってるわけじゃなく、素直にそう思う。緒方さんの方がよっぽど女性らしい柔らかい雰囲気を持っている。
「仕事で忙しい桐島さんの隣に並ぶなら、私みたいな方がいいんじゃないかなって。あ、みんなが言ってるだけなんだけどね。私は相沢さんみたいなサバサバした感じすごく好きだし、逆に羨ましく思ってるの」
ニコー!と眩しいほどの笑顔で言われ、苦笑いがもれた。
『逆に』という部分に引っ掛かりながらも、どうでもいいか……と思い黙っている私に、まだ緒方さんが続ける。