かりそめの関係でしたが、独占欲強めな彼の愛妻に指名されました
「本当ですけど、そこまでの話じゃないです。ただ……こう、話の流れでそうなっただけで」
「話の流れで、そこにはいない第三者を出来心で悪く言うことはあるかもしれないけど、目の前にいる人間相手にマウントをとるっていうのは、最初からそういうつもりがないと無理だよ」
すぐに返され、思わず黙る。
それは……そうかもしれない。
けれど、緒方さんのあれは、本当にそこまで意地の悪いものではない気がしてなんとかフォローしたくなる。
緒方さんが言っていた愛想がどうのっていうのは事実だし、私も別に傷ついていないのに周りに心配されるのは落ち着かないというのが一番かもしれない。
〝女の子扱い〟されるのは慣れない。
「融資部の緒方さんって女性なんですけど。緒方さん、桐島さんのことが好きなんですよ。ずっと前から憧れてたって言ってました。だから、噂が流れた私にやきもち焼いただけで……そこまでの悪気はなかったと思います」
というかたぶん、悪気はまったくないと思う。
私を傷つけようっていう頭もない。
ただ純粋に自分に自信があって周りからどう見られているかをよく知っているからあんな物言いになっただけだ。
別に緒方さんを庇う義務もないけれど、おおごとにされるのが嫌でそう説明する。
結果的に緒方さんの気持ちを暴露してしまったものの、紹介してほしいという時点で気持ちがあると言っているようなものだし問題はないはずだ。……たぶん。
じっと、訴えるように見ている先で、桐島さんは表情ひとつ変えなかった。