かりそめの関係でしたが、独占欲強めな彼の愛妻に指名されました
「好きだからって理由で誰かを傷つけて許されることなんて、まずないと思うけどね」
桐島さんが視線をコーヒーに落とす。
やっと彼の視線から解放されホッと息をついてから、あれ?と疑問に思った。
そういえば、桐島さんにしては珍しく雰囲気がピリピリしていた。
〝男に興味がある〟なんて噂を流されたって知った時も余裕に構えていたのに……と不思議に思っていると、桐島さんが続ける。
「本当に相沢さんが嫌な思いをしてないならいいよ。ただ、女性の世界は怖いって相沢さんも言ってただろ。もしなにかあったら我慢していないで俺に言って欲しい。できる限りのことはする」
「……ありがとうございます」
正直、女性同士の戦いを前に、男性ができることなんてほぼないに等しい。私だって、庇うような真似はしてほしくない。そんなのフェアじゃない。
そう思いながらもお礼は言っておく。
ここで変な意地をはって、またピリピリしても困る。
でも……緒方さんの番号はどうしよう。さっき、緒方さんが桐島さんを好きだと言ったのに完全にスルーされている。
意図的だとしても、うっかりだとしても、再度話題を持ち出す雰囲気でもない気がして、心の中で緒方さんに謝った。
「それより、これ」
桐島さんが持っていたビニール袋をゴトッとテーブルに置く。
なにかと思えば、中から出てきたのはコンビニのデザートだった。