かりそめの関係でしたが、独占欲強めな彼の愛妻に指名されました
「え……っ、これ、なんで……」
「さっきコンビニに寄ったらたまたまあったから。昨日、相沢さんがはまってるって言ってたのってこれで合ってる?」
「合ってます……っ。えー、すごい。なかなか買えないのに」
桐島さんがビニール袋から出したのは、コンビニスイーツ。その名も〝こだわりベークドチーズ。極み〟。
昨日、飲んでいるときに最近はまっていると私が話題に挙げたものだった。
『ベークドチーズケーキが大好きなんです。ケーキ屋さんのももちろん好きなんですけど、日持ちしないからなかなか買えなくて。でも、最近、会社近くのコンビニで売るようになったチーズケーキがケーキ屋さんのと並ぶくらいにおいしくてびっくりしました』
たしか、会社の最寄り駅から二駅くらいのところにできたスイーツバイキングのお店の話からの流れだった。
『たぶん、私の他にもはまってる人が近くにいるんだと思います。おいしいから仕方ないけど、なかなか買えなくて。だから見かけるとついいっぱい買っちゃってます』
ただの雑談だったのに、よく覚えていたな……と驚いていると桐島さんが笑う。
「よかった。賞味期限まだ先だし、とりあえずあるだけ買ってきたから好きな時に食べて」
「ありがとうございます。あの、お金払います」
この〝極みシリーズ〟はコンビニスイーツの中でも高級品で、ひとつ四百円近くする。みっつだから千五百円渡せば大丈夫かな、と頭のなかで計算していると、桐島さんは「いいよ。俺が勝手にしたことだから」と断った。