かりそめの関係でしたが、独占欲強めな彼の愛妻に指名されました


「黒田に付きまとわれたんだって? 大丈夫だったか?」

玄関で待ち伏せするように立っていた陸が開口一番に聞いてきたのは、黒田につきまとわれた翌々日の夜だった。

私は話していないし、黒田のことは陸も着信拒否している。
そうなると情報元はひとつしかない。桐島さんだ。

「大丈夫。たまたま桐島さんが通りがかってうまく嘘ついてくれたから」

靴を脱ぎながら言い、未だ玄関に仁王立ちしている陸を押してどかす。

八月二十九日。土曜日。今日は紗江子と一日遊んできた。
クリアランスセールという単語に目を輝かせた紗江子が次から次に服を買うから、それにつられて私も珍しく買い込んでしまったので、帰りの電車は肩が言葉通り落ちるかと思った。

八月ももう終わりなので、今日買った夏服の出番は来年となりそうだけど、満足の買い物ができて気分がいい。
とりあえず肩にかけていたいくつものショップの紙袋をソファにどさっと置いてから洗面所に向かうと、陸が後ろをついてくる。


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