かりそめの関係でしたが、独占欲強めな彼の愛妻に指名されました


中二の時の痴漢騒動の一件は陸には話していない。
だから、桐島さんが内緒にしてくれていたことにホッとしていた。

でも……私は、話している時から桐島さんなら誰にも言ったりしないだろうってどこかで安心していた気がする。

きちんと話すようになってからまだ一週間ちょっとしか経っていないのに、随分こう……私の中で重要人物となりつつあるというか、おかしな感じだ。

その変な感じを、急に距離が縮んだせいかな、と片付けているとこっちを見てニヤニヤしている陸に気付いた。

「なに。気持ち悪い」
「いや、もしかして澪と桐島っていい感じなのかなって思って。桐島もやたらとおまえのこと気にかけてるみたいだし、もしかしたら既にそういうことだろ」

決めつけてかかってくる陸に、顔をしかめる。

「紗江子もやたらと桐島さんとくっつけたがるんだけど、カップル揃ってやめて欲しい。なにをどう見たらいい感じに見えるの? 言っておくけど、桐島さんとはきちんと会話するようになってまだ一週間しか経ってないんだからね」
「時間なんか関係ないだろ。相手が自分にとって大事かどうかってフィーリングでわかるじゃん。なんか一緒にいる雰囲気とかで、ああこいつだってストンって落ちるっていうか、しっくりくるっていうか……ああ、ほらパズルのピースみたいな。ピタッて感じ」

「擬音が多すぎてわからない」

ショップの紙袋を畳んでテレビ台の下のラックに収納する。
それからお風呂を沸かしたり、買った服を一度洗うために洗濯ネットに入れたりしている間も、陸のフィーリング論は続いていた。

冷蔵庫から麦茶を取り出しキッチンに立ったまま飲んでいると、ひと通りしゃべり終わった陸はようやく黙り……それから私を見た。


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