東京ヴァルハラ異聞録
「『Walhalla』?なんだこりゃ?」


取り出したスマホの画面には、そう書かれていて、俺達がそれを見ていると突然画面が切り替わり、顔写真と名前が現れたのだ。


「な、何これ!何で私の顔と名前が……」


男性の名前は「山瀬篤志(ヤマセ アツシ)」、女性は「長谷部美佳(ハセベ ミカ)」。


そして、三人のスマホの画面に、「登録」という文字が表示された。


「な、なんなんですかね、これ……Walhallaって……」


俺がそう呟いた時、女性が何かを思い出したかのように口を開いた。


「Walhalla……ヴァルハラ。ヴァルキリーによって選別された戦死者の魂が集まる館。北欧神話の、オーディンの宮殿の事?」


ああ、ゲームか何かで見たような気がするな。


「はっ!じゃあ何かよ?ここがそのヴァルハラだっての?どう見ても東京だし、宮殿どころか俺達は死んでもいねぇぞ?戦死者が集まるんだろ?どこで戦死なんてしたんだよ」


バカにしたように山瀬が笑う。


確かに戦死なんてしてないし、山瀬の言う通りここは東京。


……だよな?


「そんなの私に言われても知らないわよ。書いてある文字を読んだだけだし……」
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