東京ヴァルハラ異聞録
「そうか……フェンリルを倒してくれたのか。でも、何で俺だけ……」


そこまで言って、俺は気付いた。


バベルの塔に入る前、フェンリルの前足に蹴られて日本刀で防いでいた事を。


それが「戦闘行為を行った」と判断され、討伐報酬としてこれが貰えたのかと。


武器がまだ進化する……。


つまり、まだ強くなれるって事か。


「昴、これはもういらねぇだろ。お前は、もう自分の想いで戦ってるんだからよ。誰の為とか……そんなのはもう考えるな」


篠田さんが、倒れている俺から帽子を取り、そして自分の頭にそれを乗せた。


「結城昴。さあ、戦いの時間だぜ」


黒井が俺を見下ろして、ニヤリと笑ったと同時に、俺の指が画面に触れた。


瞬間、力が湧き上がるのがわかる。


瞬間回復の後、ゆっくりと立ち上がった俺は、振り返って皆の姿を探した。


「今のは……何だったんだ?」


幻覚か、それとも俺が見たいと思った物が脳内で再生されただけか。


それは何でも構わない。


「高山真治、決着をつけよう。俺と、お前の二人だけで!」


この力、恵梨香さんと沙羅を巻き込む可能性がある。


だから、二人にはこの戦いを見守っていてほしい。
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