東京ヴァルハラ異聞録
俺達は、クイーンに案内されて、塔の中心にある柱の扉の中に入った。


そこはエレベーターになっていて、俺達をどこかに運んでいる。


「敵意は……ないようだがクイーン。先程の真治少年は何だったのだ?お前が刺された時、我が主と言っておきながら、今また、我が主に合わせると言っている」


「あれは、我が主の切り離された自我とでも言いましょうか。今だけでなく、ヴァルハラにも時々降りていたみたいですが。心当たりはありませんか?結城昴さん」


切り離された自我か。


つまり、俺が心の闇の中で何度か出会ったのがそれだったって事か。


そうやって俺と戦う事で、俺を強くしてくれていたんだろうな。


いずれここに辿り着くと考えて。


「こうなるって……ずっと昔から決まっていたって事か」


「……そうですね。未来はすでに決められていたのです。あなた方がここに来る事も、我が主の分身に勝利する事も。そして、結城昴さんがあの願いを口にする事も」


何だか納得出来ない話だ。


俺達は決められた運命を、ただなぞっていただけなのか。


そう考えると、死んで行った人達の運命も決まっていたのだろう。


俺がいくら助けたいと願っても、運命には抗えなかったんだ。
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