東京ヴァルハラ異聞録
「真治少年……やっと、やっと会えた」


落下した高山真治を受け止め、愛しそうに頬を寄せた恵梨香さん。


「う……ん。ここは……あれ?恵梨香さんがいる。やっぱり……恵梨香さんだ」


目を覚ました高山真治が、恵梨香さんの頬を撫でて笑って見せた。


「何を当たり前の事を……もう離さない。だから、真治も私から離れないで。どこにいても友達だなんて……寂しい事を言わないでよ」


この二人には、ヴァルハラ以前の「バベル」の頃から続く、俺達には分からない事があるんだろうな。


それは、俺達が入り込める余地のない物なのだろう。


「ごめんなさい、恵梨香さん。でも、結城昴が願いを叶えてくれたんでしょ?俺が選択肢を間違った答えを、間違う事なく」


「うん。あの子が……言ってくれた。だから、私はまた真治と会えた」


下の階で、高山真治の分身が現れて願いを聞かれた時、俺はどの選択肢も選ばなかった。


ただ、「死んだ人達も今生きている人達も、高山真治も元の世界に一緒に帰る……だ」と言っただけ。


あの時、「この中から選べ」とは言われなかったから、俺の想いを言っただけだけど。


まさかそれがすんなりと受け入れられるとは思わなかったな。
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