東京ヴァルハラ異聞録
そう、長谷部さんが言った時だった。


ドンッ!


と、俺達の背後で何かが衝突する音が聞こえたのだ。


慌てて振り返ると、そこには車道に停まっていた車にぶつかったであろう、人の姿があったのだ。


身体中から血を流し、今にも死にそうな男性の姿が。


「な、なんだよいきなり……なんで血が」


その光景に、山瀬も驚いて。


山瀬だけじゃない。


俺も、長谷部さんも、声一つ出せずにそれを見る事しか出来なかった。







「こいつはここで止めろ!!絶対にこれ以上進行させるな!!」





怒鳴り声と共に、路地から飛び出して来た男がいた。


手にはハンマー。


柄が俺の身長ほどもある、明らかに戦闘用だとわかる形状の物。


辺りを見回し、俺達の姿を捉えた大柄の男は、こちらに向かって走って来たのだ。


「お、おいおいおい!!な、なんだよ!ふざけんじゃねぇぞ!」


パニック状態の山瀬。


ハンマーを振りかぶったその時だった。


男が飛び出して来た路地から、もう一人の男が飛び出したのだ。


街路樹を蹴って、ハンマーの男に背後から迫って棒のような物で頭部を横に薙ぎ払う。


が、男は微かにグラついただけだった。
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