東京ヴァルハラ異聞録
反逆者
深く、沈んだような感覚から、身体が急浮上する感覚へと変わる。
暖かなものに包まれて意識が緩やかに覚醒して行く。
「……はっ!!」
目覚めたのは、あのホテル。
以前に目覚めたのと同じ部屋で、俺は死んだのだと改めてわかった。
「拓真……やられたな。今の俺じゃあ、何も成せないじゃないか」
悟さんと梨奈さんと合流する事も叶わなかったし、舞桜を助けてやる事も出来ない。
強くない俺は、そんな簡単な事も出来ないんだなと痛感させられた。
ベッドから足を下ろし、部屋の入り口に向かって歩く。
廊下を歩き、エレベーターで一階に降りた。
そして、ホテルから出ると……そこに待っていたのは久慈さんだった。
大柄な男と、キャップを被った女性、そして美佳さんを連れて。
「やっぱり死んでいたか。大方、裏切られて殺されたってところか?」
久慈さんの言葉に、俺は俯いた。
確かに、友達だと思っていた拓真に殺されたけど……どうしてその事を久慈さんは知っているんだ?
どこかで見ていたのか?
「あの……悟さんと梨奈さんはどこにいますか?はぐれてしまって上手く合流出来なかったんですよ」