東京ヴァルハラ異聞録
近くにあるカラオケ店の三階。


バリをコンセプトにした飲食店に連れられ、ダーツがある部屋の奥へと通された。


「タケさん、連れて来ました。結城昴です」


その部屋の一番奥のテーブル。


山ほどの料理を口に運びながら、久慈さんの言葉に顔を上げた。


「……お前、ここに座れ。腹減ってるだろ?」


怒鳴り声の一つでも上げられると思ったけど、予想外。


俺は言われるままに、篠田さんの正面に座った。


「じゃあタケさん、何かあったら呼んでください」


「呼ばねぇよ。持ち場に戻れ」


久慈さん達にそう言った篠田さんは、再び食事を始める。


「あ、あの……俺が裏切り者だって聞かされたんですけど……俺は裏切ったつもりはありません」


「お前の意思はどうでもいいんだよ。状況がお前を裏切り者にしてるからな。俺にはその言葉が真実か嘘かを見極める術はねえ。わかるか?」


篠田さんの言葉、一つ一つが重い。


何というか……首に刃物を常に突き付けられているような感覚。


生きた心地が全くしない。


「まあ、それは問題じゃねぇ。問題があるとすれば……そんなお前が、真由を求めているって事だ」
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