東京ヴァルハラ異聞録
口を手で拭い、立ち上がった篠田さん。


俺を見下ろして、冷たい視線を向ける。


「言えよ。本当の狙いは何だ。真由の居場所を知ってどうする?そもそもお前……どこで真由の名前を知ったんだ?梨奈から聞いたぜ。真由の名前を教える前から、お前は真由の名前を知っていたってな」


「そ、それは……秋葉原のトイレの鏡に真由さんが映ってて……」


「それだけじゃ名前はわからねぇだろ。どこかで真由の名前を聞いた。梨奈じゃない、他の誰かからだ……違うか?」


そこまで言われて、俺は気付いた。


梨奈さんは、そんな話を篠田さんにしていなかったはずだ。


少なくとも、俺と一緒にいた時は。


だとすると……。


「待ってください。梨奈さんは戻って来てるんですか!?悟さんは行方不明だって聞きましたけど」


「俺が質問してるんだよ。お前が質問してんじゃねえ」


眉間にシワを寄せ、殺意を飛ばしてくる篠田さんに、それ以上聞くことも出来ず。


「当ててやろうか?お前に真由の名前を教えたのは……黒崎沙羅。北軍の死神って呼ばれてるやつだ」


あまりに鋭い篠田さんに、俺はあからさまに驚いた表情を見せてしまった。
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