東京ヴァルハラ異聞録
かなりの衝撃を足に感じる。


骨が粉砕されるくらいの衝撃は覚悟していたけど……思ったよりも大した事はなかった。


上手く両足で地面に着地したが、勢いを殺す事は出来ず、地面を滑り……そして止まった。


「くぅ……俺は違うって、裏切ってなんかいないのに!」


三階の高さから落下しても何とかなった。


その安心感もあったが、それ以上にまずい事になっているのは理解出来た。


そして……。




「案外早かったな。上から落ちてきたって事は……裏切り者じゃないと証明出来なかったって事だ」


一階の入口から出て来た久慈さんが、そんな俺を見てそう呟いた。


いや、久慈さんだけじゃない。


ぞろぞろと、カラオケ店から出て来た西軍の人間、およそ30人を前に、俺は逃げる以外の選択肢がないと判断するしかなかった。


チラリと左側を見て、そちらに走る。


「逃げたぞ!追え!」


「捕まえろ!!殺しても意味がねぇ!」


口々に叫んで、俺の後を追う人達。


久慈さんが追い掛けて来たら、俺が逃げたところですぐ追いつかれるだろうけど……。


運良くと言えば良いのか、久慈さんは追い掛けては来なかった。


篠田さんに持ち場に戻れと言われたからなのか、それだけが救いだった。
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