東京ヴァルハラ異聞録
悟さんに肩を貸し、人気のない路地を歩く。


どうやら、彼も一週間前にここに来たらしく、多くの事は分かっていないようだった。


そして、この悟さんの仲間という人達も。


「つまり、人を殺せば『ソウル』が手に入って、殺された方は失う。ソウルが0で死んでしまうと二度と復活出来ないって事?」


長谷部さんの問いに、悟さんは頷いた。


「ソウルってのは、その言葉通り魂の事だ。だから、それがなくなれば魂の死。ソウルが5個あれば、新しい武器を引けるけど、引きすぎてソウルが0にならないように注意しないとね」


命を削って武器を引く……か。


考えてみれば、とんでもない話だな。


「それにしても、この街に来たばかりのやつが有沢を殺るとはね。こいつぁ……化けるかもしれないな」


「悟と同じ、星4レアだしね。西軍も安泰ってわけ?」


俺の気持ちなんて無視して、俺達の前を歩く人達は嬉しそうに話している。


「あ、あの……ここが魂が集まる場所っていうのはわかりましたけど……帰る方法はないんですか?」


悟さんは一週間、この街にいるらしいけど、帰る方法がないからこの街に留まっているのかなと不安になってしまう。


「ああ、聞いた話だと、各軍にはそれぞれ『キング』と呼ばれる物が存在するらしい。敵軍のそれを破壊出来れば、元の世界に戻れるって言われてるけど……俺は見た事ないな」


帰る方法はある。


だったら、さっさと敵軍に乗り込んでキングを破壊すれば……なんて、言うほど簡単じゃないんだろうな。
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