東京ヴァルハラ異聞録
~その頃~


「はぁ、はぁ……い、痛てぇ。骨が折れてるんじゃねぇのか?くそっ」


山瀬は、隙を見てなんとか身体を動かして、路地へと逃げ込んでいた。


何が起こっているかなんてわからなくても、殺されてたまるかという思いだけで。


「武器を引けって……包丁であんなでっけぇハンマーに勝てるかよ。それにしても……こんなスマホから武器が出るんだな。どうなってんだこりゃ」


スマホをまじまじと見詰めてみるが、当然山瀬にわかるはずがない。


画面を見ては首を傾げ、もう一度出来るかと考え、ガチャという項目に触れてみるとさらに違う画面に。


「お?ソウル×5で一回引ける?ソウルって……これか?丁度5個あるじゃねえか」


有沢がハンマー、黒部が槍を持っていたのだから、自分も実用的な武器が欲しいと願ったのだろう。


迷う事なく画面に触れて、再び画面から光の渦が飛び出した。


「ふぅ……よっしゃ。良いの来いよ」


祈るように光の渦に手を突っ込んだ山瀬。


勢いよくそこから手を引き抜くと……両刃の手斧が握られていて、山瀬の顔がパアッと明るくなった。


「おほっ!なかなか良いんじゃねぇの!?」


満面の笑みで喜ぶ山瀬。


だが、その背後に迫る影には気付いていなかった。
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