東京ヴァルハラ異聞録
バベルの塔……誰も登った事がない、その頂上に何があるかわからないと言われる塔だ。


ゆえに、全ての願いがあるというのも、嘘か本当かはわからない……はずだろ?


「あの夢物語を信じてるのかよ。キングを破壊して元の世界に戻ったやつはこの目で見た。だけどな、バベルの塔に登って願いを叶えたなんてやつは見た事がねえ。そんな薄い可能性を信じるってのか?」


「沙羅はやるよ。どうせ信じるなら、何もない可能性より、何かある可能性の方が良いに決まってるでしょ?」


その言葉に、篠田さんは何も言えなくなったようで。


俯いて、ポロポロと涙を流していた。


あの強い篠田さんが、沙羅の言葉に何を感じたのだろうか。


そして俺は、どうすれば良いのか。


真由さんに会うという目的は果たせた。


次は、元の世界に戻るという目的だけど……。


篠田さんも、沙羅も、自分の為ではなく人の為に動いていたんだな。


この二人なら、キングを破壊して元の世界に戻る事なんて容易いだろうに。


そう考えると……梨奈さんや美佳さん、敵なのに一緒に行動した人達や、知り合った人達。


この街で生き抜く舞桜みたいな子供達もいるんだ。


全ての願いが塔にあるって言うなら、俺の願いは……。
< 207 / 1,037 >

この作品をシェア

pagetop