東京ヴァルハラ異聞録
これは……俺のスマホじゃない。


いや、そうじゃなくて。


夢の中で見た、武器を取り出せるスマホだ。


確か、PBTとか言っていたかな。


「ははっ、冗談きついよ。じゃあ何か?あれは夢じゃなかったってのか?」


頭に手を当て、必死に状況を整理しようとするけど、情報なんてほとんどなくて。


外に出て確認するしかないか。


そう考えた俺は、部屋を出てエレベーターの方に向かった。


一階に降り、人気のないロビーを通って外に出る。


空は明るく、朝になったのかと思いながら、万世橋の方へと歩く。


俺が目覚めたホテルは、こちらからみると円柱状に見える。


それにしても……人通りも車もほとんどないな。


夢の中と同じだ。


黒部悟……あの男が言っていた事は本当だったのかと、徐々に信じ始めていた。


「だったら、俺は人を殺したってのか?勘弁してくれよ」


あの出来事が、時間が経つにつれて鮮明に蘇る。


罪悪感と不安……いや、絶望感が肩にのしかかって。


トボトボと橋の方に向かって歩いていた時、背後から声が聞こえた。


「ちょっと!昴くんじゃない!?待ってよ!」


その声に振り返ると……長谷部さんが手を振って駆け寄って来た。
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