東京ヴァルハラ異聞録
「あ、長谷部さん。もしかして、長谷部さんも……」


俺が出たホテルから出てきたように見えたからそうなんだろうけど、今の質問はそっちじゃなかった。


「ここって秋葉原だよね?じゃあやっぱり……昨日の事は本当に起こった事なの?昴くんがあの犬の化け物に食べられて……私も噛み付かれて……」


話している間に、思い出して恐怖したのか、ブルッと身震いをする。


「やっぱり……夢じゃなかったんですね。あれは」


俺だけじゃなく、長谷部さんも経験したのなら、本当に起こった事だという事だ。


「なんで私がこんな目に……そうだ。昨日助けてくれた人。黒部さん?あの人に会えばもっともっと教えてくれるかもしれないわね」


ポンッと手を叩き、パアッと明るい表情に変わった長谷部さん。


だけど……。


「……どこにいるんですかね?悟さんどころか、誰の姿も見えないですけど」


「……いきなり暗礁に乗り上げたわね」


なんて嘆いていても仕方がない。


俺達は話をしながら秋葉原駅を目指して歩いた。


万世橋を渡っている時、右側に見えた巨大な白い塔が気になって足を止める。


あんな所にあんな建造物なかったはずなのに……あれは何だろう。
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