東京ヴァルハラ異聞録
そのまま悟さんの脚にぶつかり、もつれるようにして地面に倒れる。


お互いに予期せぬトラブル。


それでも運を掴んだのは俺だ。


慌てて起き上がろうとする俺と悟さん。


立ち上がり、武器を構えるけど、悟さんは槍をまともに握れないようだった。


フラフラと穂先が揺れ、何とか右脇に挟んで固定しなければならない程に。


「ま、まさか!悟がこんなガキに!?おのれ……おのれっ!!」


「はぁ……はぁ……延吉がそれほど強くないと言うのは本当だったみたいね。人に戦わせて、自分で戦うのを怠ったツケよ。だから、私なんかに手間取っているのよ!」


戸惑う延吉に、梨奈さんが叫んだ。


だけど、状況は何も変わっていない。


どうすればいいと、悟さんと対峙しているが答えは出ない。


そんな時、あの男が吠えたのだ。


「わたるくん!!手はありますよ!だから……後は頼みました!籾井さんを殺してください!僕の覚悟を、その目に焼き付けてください!」


そう声を上げた千桜さん。


光に包まれて戦っている中で、突然腕を広げて。


吸い込まれるように籾井の忍者刀が千桜さんの胸に突き刺さった。


と、同時に、千桜さんは棒手裏剣を握り締め、籾井の両肩にそれを突き刺したのだ。
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