東京ヴァルハラ異聞録
「お、おのれ……欲を出したか……」


胸を貫かれた延吉が、そこまで言って吐血する。


その血が悟さんの目に入ったのか、慌てて血を拭おうとするが……その隙が命取りだ!


「もらったぞ!悟さん!!」


落下と共に、悟さんに日本刀を振り下ろす。


延吉が光の粒に変わる。


パアッと辺りに光が溢れた次の瞬間。


俺の日本刀が悟さんを両断し、崩れ落ちるように地面に着地した。


「……ど、どうだ!?」


延吉は光になったけど、悟さんのPBTにソウルは入ったのか。


その答えは……地面に倒れた悟さんが、弾けるように光に変わったのを見て、間に合ったのだと判断した。


「やった……やったよ昴くん!」


地面に腰を下ろす俺に駆け寄り、嬉しそうに背中に抱きついた梨奈さん。


「は、はは……何とかって感じですかね」


とは言え、北軍に侵攻しろと言われた段階の俺達では、とてもじゃないけど勝てなかった。


梨奈さんが風火輪を引いてくれた事、そして千桜さんが命を投げ出して道を示してくれたから勝てたんだ。


そう考えると、どれか一つでも欠けていたら、悟さんを西軍に戻すどころか、延吉に勝つ事も出来なかった。
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