東京ヴァルハラ異聞録
加速する悪意
悟さんを解放し、延吉を倒した。


俺と梨奈さんは、傷を癒す為に近くのビルに入り、そこの一室に潜んでいた。


「さすがにこの怪我だと、治りが遅いわね。顔と胸の傷はともかく、右脚が」


会社の応接室のような部屋で、ソファに横になっている俺の脚を見て、梨奈さんがそう呟いた。


「それだけ悟さんが強かったって事ですよ。梨奈さんと千桜さんがいなければ、今頃俺は死んでましたからね」


「あのオレンジの人……一体何者?アドバイスといい、行動といい、何か一本芯が通ってる感じがするわね。ただものじゃないわ」


梨奈さんの言う通り、千桜さんはただものではないと思う。


その想いに応える事が出来て一安心と言うところだよ。


「でも、おかげで今回の目的は果たせたわね。一旦西軍に戻る?それとも、まだ北軍でやる事がある?」


そう言われると……舞桜達は元気にしているのかとか、麻衣はどこにいるんだとか、色々あるけれど。


「沙羅はどこに行ったんですかね。北軍で仲間を集めるって言ってましたけど」


北軍に入ってすぐに姿が見えなくなった。


自軍に戻って、はいさようならなんて寂しすぎるじゃないか。
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