東京ヴァルハラ異聞録
「ははーん。さては昴くん、沙羅ちゃんの事が好きなんだね?」


ぼんやりと窓を見ていた俺に、梨奈さんがニヤニヤしながら尋ねた。


その言葉にドキッとして、思わず梨奈さんを見る。


「え、あの……いや」


「隠さなくても良いって。そっか、沙羅ちゃんか。あの子、のほほんとしてるから、しっかり好きって言わないと気付いてくれないわよ?きっと」


俺の返事も待たずに話を進める梨奈さんに、俺は何を言えば良いのか。


「い、いや、そう言うんじゃないですって!!そりゃあ沙羅は可愛いし、一緒にいて落ち着けますけど……」


何を言ってるんだ俺は。


梨奈さんに誘導されて、別に言わなくてもいい事を言ってるぞ。


「そういう事は、沙羅ちゃんに言ってあげなさい。あの子は乙女だから、ムードを考えてね」


だから、なんでその話に。


「ち、違いますよ!沙羅が北軍に入ってから姿が見えない。考えすぎかもしれないけど、何だか嫌な予感がするんですよね。別れたから寂しいだけかもしれませんけど」


「嫌な予感?自軍にいるのに」


梨奈さんが言いたい事はわかるけど、俺だって自軍にいて裏切り者にされたくらいだ。


自軍の人間が味方だとは限らないんじゃないか。
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