東京ヴァルハラ異聞録
回復するまで休み、俺達の選択は戦闘継続。


舞桜の事が気になるというのもあり、拓真を探したいという思いもあったから。


道路を歩くより空を。


ビルを上を飛んだ方が自由に動けるし、人を探すには良いかと思い、梨奈さんと屋上に上がった。


それほど高い建物のないこの周辺。


自由に動ける……と考えたものの、道路を挟んだ向かい側のビルに飛び移るには勇気がいるな。


「こ、ここを飛ぶのね。私に出来るのかな」


二車線の道路、そして歩道を含めると、隣のビルまで10メートルは離れているだろうか?


初めての人がこれを目の当たりにすると、臆するのはわかる。


俺もそうだったから。


「大丈夫ですよ。足に意識を集中して、絶対に飛べるってイメージを持ってください。先に俺がやってみますから」


向かい側のビルは、俺達がいるビルよりも少し低い。


沙羅ほど舞えないにしても、これくらいなら行けるはずだ。


「ほっ!」


日本刀を手に持ち、跳躍した俺は、隣のビルの屋上に難なく着地出来た。


梨奈さんに教えながらも、俺自身が持て余していた力に慣れてきたと言うか。


馴染むような感覚を得られた。


そして、梨奈さんがビルを飛び移れたのはそれから10分後の事だった。
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