東京ヴァルハラ異聞録
「一度飛んでしまえば、それほど難しいわけでもないわね」


「そうですね。横方向ならなんとか。縦方向のジャンプは、俺はまだ苦手ですけどね」


ビルからビルへと飛び移りながら、そんな話をする。


そろそろ民家もちらほらと見え始める。


沙羅や川本くらい華麗にジャンプ出来たら、高いビルへも飛び移れるだろうけど、俺は光輝と失敗して地面に落ちてるからな。


持っている武器によって、向き不向きがあるかもしれないな。


そんな事を考えていた時、前方のビルの屋上にいた人が俺達に気付き、武器を取り出した。


「梨奈さん!前!」


「わかってる!」


弓を引き、高速で矢が射られる。


その矢は、狙いすましたかのように俺の着地点に来て。


日本刀で切り払い、その男のいるビルへと向かう。


「昴くん!そこだけじゃない!周りを見て!」


梨奈さんの声に、周囲に目を配ると、半径50メートル以内に10人はいるだろうか。


その全ての人達が遠距離武器を構えていたのだ。


「ビルの上はビルの上で、楽には進めないってわけか!」


「分かれて戦いましょう!私は右の方、昴くんは左の方を!」


梨奈さんの言葉に頷いたけど、俺は少し悩んでいた。
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