東京ヴァルハラ異聞録
ビルから民家の屋根、そしてまたビルへと移動し、矢を射ってくるやつらに接近する。


遠距離武器の特性か、それとも本人の腕か、屋上から矢を射るやつらは皆、精度が高い。


必ず俺がいる場所に矢が飛んでくる。


回避なんて出来ない。


全てを払い落とすしか方法がないのだ。


「だけどこの程度、当たってたまるかっ!!」


確かに狙いは凄まじく良いし、ピタリと俺に合わせてくるけど、速度も威力も大した事はない。


篠田さんの高速の拳の方が何万倍も恐怖を感じる!


その男がいるビルは、今俺がいるビルよりも高い。


地上に下りて、階段を上るべきか?


いや、そんな事をしていたら、一斉に梨奈さんを狙うだろう。


迷っている暇なんてなかった。


右手に日本刀、左手に鞘を持ち、俺は隣のビルに向かって飛んだ。


案の定、高さが足りずに壁に激突する!


「うおおおおっ!!」


声を上げ、壁にぶつかる寸前に俺は、日本刀を壁に突き刺した。


それを支えに壁に足を付き、素早く壁を蹴り日本刀の刃の腹に乗る。


さらに足の裏に意識を集中し、上へと飛び上がった。


跳躍力が足りないなら二度飛べば良い!


屋上へと飛んだ俺は、すかさず日本刀を取り出して、唖然とする男に斬り掛かった。
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