東京ヴァルハラ異聞録
「日没だもんね。でも、それだと私達も移動が困難になるわ。距離感も掴みにくくなるし……」


血のように真っ赤な空から、青黒い空へと移り変わって行っている。


俺は夜でも見えないわけじゃない。


日本刀のおかげか、暗い所でも人の顔がわかるくらいには見えるんだけど。


やはり、地上を行く方が安全なのかもしれないな。


そう思い、向かいのビルを見上げた時だった。


見覚えのある顔が二人。


ビルからビルへと飛び移る影。


一人が、もう一人を肩に担いで移動をしている。


あの顔は……忘れるはずがない!!


その人物が担いでいる人を見て、俺は声を上げずにはいられなかった。


「沙羅!!」


あいつ、沙羅に何をした!


同じ軍の人間だろ!


味方のはずだろ!!


「え!?昴くん!?」


梨奈さんが声を出した時には、俺は沙羅を追い掛けて隣のビルに飛び移っていた。


北軍の弓矢隊がいるけれど、そんな事は言っていられない。


「沙羅に……沙羅に何をした!!答えろ……秋本!!」


秋本の後を追い掛けていた俺がそう声を張り上げると、先を行く秋本が足を止めた。


ゆっくりと振り返り、ハルベルトを俺に向けて待ち構えたのだ。
< 269 / 1,037 >

この作品をシェア

pagetop