東京ヴァルハラ異聞録
「人だ……人がいるよ昴くん!もしかして、偶然人通りが少なかっただけで、元の世界に……」


そう、嬉しそうに美佳さんは言ったけど、俺はそうではないと気付いてしまった。


元の世界に戻ったと信じたいのはわかるけど……人々の影が青い。


悟さんが言っていた。


西軍の人間は影が青いって。


「美佳さん、影が青いよ。だから、ここはやっぱり……」


俺がそう言うと、美佳さんは俯いて表情が暗くなる。


どうしたもんだと悩んでいた時。






「わかってるじゃないか。来たばかりの人は、それを信じたくなくて受け入れるまでに時間がかかるもんだけど」





俺達の背後からそんな声が聞こえて、頭にポンッと手を置かれた感覚に、慌てて振り返るとそこにいたのは。


「黒部さん!?」


「正解、覚えててくれたんだ?嬉しいな」


ニッと笑い、俺と美佳さんの頭をポンポンと叩く。


目の前に悟さんがいる……という事は、やはり昨晩の事は本当にあったという事だ。


色々聞きたかったけど、聞きたい事が全て真実だったとわかり、何を聞いていいかがわからなくなってしまった。


「とりあえず歩こうか。二人には色々教えておいた方がいいと思うし」
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