東京ヴァルハラ異聞録
「星4と星3か……こりゃあ、大事に育てれば戦力になるな。よし、行こうか。俺は昨日の人形町通りを守らなきゃならないから一緒にはいられないけど、昴と美佳さんは路地で敵を待ち伏せして倒す。無理そうなら逃げる。いいね?」


もう、俺達が人を殺せる事が前提の物言いだな。


そりゃあ、死なない為には戦わなければならないっていうのはわかったけど……だからって人を殺せるのか?


何も返事が出来ないまま、俺と美佳さんは悟さんに付いて人形町の方へ向かった。


「ねえ、昴くん。本当に私達、人をその……殺さなきゃならないわけ?昨日まで普通に暮らしてたのに」


何もしなくてもいいと言うなら、俺だって人を殺したくはない。


誰だってそうだろう。


「どうすればいいかなんて、俺にだってわからないですよ。でも、強くならなければ、昨日みたいに手も足も出せずに死ぬって思うと……」


せめて、自分の命を守れるくらいに強くなりたい。


そうなるにしても、人を殺さなきゃならないんだろうなと、考えがグルグルと頭の中を回る。


俺達に提示されている選択肢は、それほど多くはない。


むしろ、限りなく少ないのだと、総力戦を前に思い知らされた気がした。
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