東京ヴァルハラ異聞録
「じゃあ、総力戦が終わって生き残っていたら万世橋で落ち合おう」


そう言われ、悟と別れた俺達は、人形町通りから一本隣の道に。


残り約10分……。


ビルと車の間に隠れて、様子を見る。


「ここに来たらどうしよう。南軍の人は、私達を殺す為に来るんでしょ?」


「多分……そうですね。少なくとも、昨日の有沢ってやつはそう感じました」


悟さんは武器レベルがあると言った。


つまり、この世界に来たばかりの俺達のレベルは最低という事だ。


強いやつと当たれば殺される。


それでも昨日、有沢を倒したみたいに、武器レベルが低くても殺す事は出来るんだ。


いかに隙を突くか。


弱い俺達は、ちまちま暗殺を繰り返すしかないんだ。


「不意打ちしかないですよね。美佳さんは弓矢だから出来そうですけど、俺はこれだから近付かないと」


握り締めた日本刀を見詰め、ボソッと呟くけれど……美佳さんは首を横に振った。


「な、何言ってるのよ。弓矢なんて使った事がないんだから。上手くやれるかどうかもわからないのに」


……まあ、そうだよな。


弓道部でもなければ弓に触る事もないだろうし、俺だって日本刀の扱いなんて知らないから。


それでも、やるしかないのだろう。
< 32 / 1,037 >

この作品をシェア

pagetop