東京ヴァルハラ異聞録
そして、PBTから再びアラーム音が聞こえた。


「始まった。仕方ない、ここで迎え撃つしかないな。俺と梨奈はあっちのビルに隠れるから、ここを敵が通ったら襲いかかる。わかったね?」


直樹さんに指示を受け、断る理由が見付からなかった俺は、小さく頷いて少し後退した。


「ね、ねえ。何の話だったの?一年前にどうとかって」


何も話していなかった美佳さんが、不思議そうに尋ねるけど、これは別に大した事じゃない。


「なんでもないですよ。それより、もうすぐ敵が来るかもしれないですから、気を抜かないようにしましょう」


思わぬ所で、あの女性の手掛かりが掴めた。


あの女性がこの街にいるかもしれない。


実際に会えるかもしれない。


そう考えると少し嬉しくて。


この総力戦を生き抜いて、梨奈さんに詳しく話を聞きたい。


そんな事を考えていた俺の耳に、地鳴りのような音と、大勢が叫んでいるような声が聞こえた。


戦闘が……始まったんだと感じて、一気に緊張感が高まる。


車の陰に隠れて見ていると、道を走る人の影が。


一人じゃない。


まるでマラソンでもしているかと思うほど、多くの人が秋葉原方面へと走る。
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