東京ヴァルハラ異聞録
「みぃつけた」
ニタリと笑い、俺に近付く男。
不意打ちをするつもりが逆に追い詰められて、男が俺達に迫る。
強くなる為に戦う……自分の身を守れるくらい強くなる……なんて、甘い考えだった。
見るからに乱暴そうで強そうな男。
俺なんかが勝てるとはとても思えない。
日本刀を構え、震えながら少しずつ後退していた時。
「うおおおおおおっ!」
前方から、直樹さんの声が聞こえた。
俺達に注意が向いたから、攻撃に出てくれた!
と、思ったけれど。
「ほわっちゃあっ!!」
男はすかさず、振り返ると同時にヌンチャクを振り、直樹さんの頬にそれを叩き付けたのだ。
あっさりと吹っ飛ばされる直樹さんを見て、このままでは俺も殺されてしまうと感じて。
震える足を無理矢理前に出して、祈るように日本刀を振るった。
すぐさま俺の方を見た男は、慌てて後方に飛び退いて、攻撃は空振り。
「はっ!そんなへっぴり腰で殺れるかよ!全然届いて……あら?」
余裕を見せて、俺を小馬鹿にしたように笑っていたけど……男の左腕が地面に落ち、断面から血が噴き出していたのだ。