東京ヴァルハラ異聞録
「こいつ、震えてやがる!カモだカモ!」


若者が笑いながら俺に迫ったその時。


ホテルの方から伸びた手斧が、若者の顔面にめり込んだ。


まるでラリアットを食らったかのように、背中から地面に倒れ込んで。


光の粒となり、弾け飛んだのだ。


「梨奈さん!!」


「ふぅ、何とか上手く行ったみたい。これで挟み撃ち。敵は一人」


勢いよく走っていた中年も、慌てて足を止めて。


「う、ぬぐぅっ!!こんな手に引っかかるとは……だがなぁ!挟み撃ちしたくらいでワシに勝てると思ってるのか!」


そう言いつつも、焦っている様子でナタを振り回す。


「うるさい!人が来たらどうするつもり!?」


焦る中年に一撃。


梨奈さんは手斧でナタを持つ手を切り落としたのだ。


「んぐううううううっ!!ち、ちくしょう!こうなったら……」


残った左手で、再びナタを取り出した中年は、俺達を見回して。


「あなたが殺りなさい。あなたまだ、人を殺す事に抵抗があるでしょ。そんな物はここでは邪魔でしかない。殺らなければ殺られる。あなたが殺せなかった敵が、後であなたの大切な人を殺すかもしれないのよ」
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