東京ヴァルハラ異聞録
梨奈さんの言葉に、俺の呼吸が荒くなる。


それは、わからない話じゃない。


きっと梨奈さんは、俺に生きる為の心構えを教えてくれようとしているんだ。


「何をごちゃごちゃと!!こうなりゃ一人でも多く殺してやるぞ!!どうせ殺られるなら、ソウルを稼いでから死んでやる!!」


声を上げ、殺意に満ちた目を向けたのは……俺に。


凄まじい気迫とスピードで、ナタを俺に目掛けて振り下ろす。


震えて……反応が出来ない。


死にたくない!


そう思った時。


ピクリと日本刀が動いたと思った刹那、俺の腕は日本刀を振り、ナタごと中年の身体を斜めに斬っていたのだ。


何がどうなったのか……俺にもわからない。


ただ、中年の身体から血と内臓が飛び出し、俺の身体を赤く染めた直後、光の粒となって弾けた。


飛び散った血も、煙のように消えて。


「よくやったわね。気に病む必要はないわ。殺らなければ殺られる。あなたが殺されていれば、その女性も殺されていた」


「ち、違う……違うんです。俺じゃない。腕が勝手に動いて……俺が殺した……」


今のが何だったのかわからない。


死にたくないという思いが俺を動かしたのか。


人を殺したというのに、最初の時ほど罪悪感がなかった。
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