東京ヴァルハラ異聞録
人を殺したけど、完全に死んだわけじゃない。


あの人の魂は、南軍に戻ってまた生き返る。


そして、再び西軍に侵攻して人を殺すのだろう。


俺は、一回とは言え、それを止めたんだ。


そう考えなければやってられない。


「美佳は練習が必要ね。ほら、あの柱を標的にして射ってみて」


南軍の第一波は通り過ぎた。


後はまばらに侵攻してくるのと、負傷して南軍に戻ろうとする人達がいるだけ。


ホテルに入り、ロビーで待機している間に、梨奈さんは美佳さんに武器の扱い方を教えている。


俺は人を殺せたから、きっと大丈夫だろうと言っていたけど、そんなにすぐに割り切れるもんじゃないよな。


「あー、難しいね。でも、思ったより力もいらないし、慣れたら私だって戦えるかも」


同じタイミングでこの街に来た俺が戦っているのを見て、触発されたのか、美佳さんは何故かやる気満々で。


「ここの武器はね、持ち主が戦いやすいように補助してくれるみたい。弓だったら弦を引きやすい、刃物だったら斬れ味が増すって言うふうにね。だから、力が弱い私でも戦えているの」


つまり、さっき身体が勝手に動いたのも、日本刀が補助してくれたって事か?


そのおかげなのか、そのせいなのか、俺は人を殺したんだよな。
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