東京ヴァルハラ異聞録
美佳さんが練習を始めて少し時間が経った。


俺はまだドキドキしていて、ロビーで日本刀を抱えて壁にもたれて座っていた。


「昴くん。退屈でしょ?ここに集合する事にしておいて、外に行ってきてもいいわよ。もう少し経験を積んだ方がいいだろうし、自分の考えで戦わないと成長もしないと思うしね」


「は、はあ……」


まだ敵がいるのに、外に行けってどういう事だ?


そんなに俺に人を殺させたいのか?


なんて考えたけど、きっと俺じゃなくても同じ事を言うんだろうな。


敵が少なくなれば、身の危険が減る。


そして、敵を倒しやすくなる。


……外に出る方は危険が伴うわけだけど。


「とりあえず、外の空気を吸ってきます」


ジッとしていても考えてしまうだけだ。


危険はあるけど、敵と遭遇しても逃げれば良い。


そんな考えで、日本刀を手にホテルを出た。


そう言えば、直樹さんは逃げたって言ってたけど、どこに行ったんだろう。


この辺りは土地勘がないし、とりあえず周囲を警戒しながら元いた場所に向かう事にした。


最初に、直樹さんに声を掛けられた場所だ。


しばらく歩いて、元の場所までやって来た俺は、その光景に足を止めた。
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