東京ヴァルハラ異聞録
剣……ロングソードを手に、左手で誰かの襟を持っているメガネの男が一人。


そして、それと対峙する、マントのような物を纏った人物。


フードが被られていて、性別はわからない。


だけど、男は影が赤、マントの人物は緑で、どちらも西軍の人間ではないという事だけはわかった。


「お前……死神だな?黒いマントを羽織って、他軍を掻き乱す死の象徴。俺がここで息の根を止めてやるよ」


ロングソードを死神と呼んだ人物に向け、自信満々にそう言い放った。


この男にやられたのか、襟を掴まれている人は西軍。


助けなければきっと殺されるだろうけど……どちらも強そうで、俺では勝てそうにない。


「あうぅ……た、助けてくれ……」


襟を掴まれていた男が、顔を上げる。


それは、逃げたはずの直樹さんだった。


ヌンチャクで殴られて、戦闘から逃げ出したと思ったのに。


結局……南軍に捕まっていたのか。


「あー、うるさいな。良いから雑魚は死んでろよ」


そう言って、男は掴んでいた襟を放し、地面に倒れた直樹さんの頭部にロングソードを突き刺したのだ。


光の粒が辺りに飛び散り、男は死神にロングソードを構えた。
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