東京ヴァルハラ異聞録
直樹さんは出会ってすぐにいなくなった。


とはいえ、知り合いが目の前で殺されるのはいい気がしない。


俺がもっともっと強くて、この二人の間に割って入れるようなら、直樹さんは死ななかったかもしれないのに。


「一つ、聞いてもいい? どうして今の人を殺したの?無抵抗で、助けまで求めていたのに」


そんな事を考えていると、死神が男にそう尋ねた。


声の細さから、女性だと判断するけど。


いや、それよりも、この街でそんな考え方をする人がいたのかと、軽くショックを受けた。


「どうしてって……敵だから。敵を殺せば俺が強くなる。そして、殺さなければ俺が飢える!簡単な答えだろ!」


そう、この男が言っている事が、普通の考えだと思っていた。


「そう。そして私も殺すのね?」


「ああ、敵だからな」


短い会話を交わした後、男がロングソードを構えて、グッと腰を落とす。


お、思った瞬間。


男は死神に急接近し、ロングソードを横に振っていたのだ。


だが、その攻撃を死神は受け止める。


こちらからではどうやって受け止めたのかわからないけれど、甲高い金属音が聞こえた。


そして、死神がそこを支点に身体をひるがえし、逆立ちのような体勢になった。
< 45 / 1,037 >

この作品をシェア

pagetop